脳の構造と部位別の機能についてわかりやすく解説

脳の部位と役割について超わかりやすく解説していきます。

脳について理解する

まずは中枢部の配置を簡単に理解するため、脳をデフォルメした図を確認してみます。

中枢神経のデフォルメ図

最も外側が大脳皮質であり、最上部の中枢(司令塔)になります。その下に大脳辺縁系という本能の部分があるのですが、理性(大脳皮質)によって押さえつけられているわけです。

さらにその下に大脳基底核や間脳、脳幹などが存在しますが、これらは情報の中継地点であり、それぞれで必要に応じた調節を実施しています。

部位 主な役割
大脳 大脳皮質 知的活動、運動や感覚の最上部
大脳辺縁系 本能、情動、記憶(海馬)
大脳基底核 学習、記憶、運動調節、筋緊張(錐体外路)
間脳 視床 感覚情報を集約
視床上部 松果体(メラトニンやセロトニンの分泌)、手綱
視床下部 自律神経の中枢、内分泌系の中枢、下垂体のホルモン分泌を調節
下垂体 ホルモン分泌(成長ホルモン、プロラクチンなど)、下位の内分泌線を刺激
脳幹 中脳 黒質(錐体外路)、脳神経(Ⅲ,Ⅳ,Ⅴ)、脳幹全体として生命活動を担う
呼吸中枢、大脳・小脳との橋渡し、脳神経(Ⅵ,Ⅶ,Ⅷ)
延髄 呼吸や循環などの生命維持中枢、錐体(錐体路)、脳神経(Ⅸ,Ⅹ,Ⅺ,Ⅻ)
小脳 運動調節、平衡感覚
脊髄 反射中枢

大脳皮質の機能

脳の最も外側に位置する大脳皮質は、ヒトをヒトたらしめる部位であり、運動や感覚の最上部に位置しています。

大脳皮質は灰白質であり、ニューロンの細胞体が集まっています。また、無数の細胞体からの伝令を神経性の束(白質)を通して伝達していきます。

大脳皮質|前頭葉、頭頂葉、後頭葉、側頭葉②
大脳皮質 前頭葉 一次運動野、前頭連合野、高次運動野、前頭眼野
頭頂葉 一次体性感覚野、二次体性感覚野、頭頂連合野
側頭葉 一次聴覚野、ウェルニッケ野、聴覚連合野、側頭連合野
後頭葉 一次視覚野、視覚前野

大脳皮質はドイツのコルビニアン・ブロードマンによって52の領域に分けられ、それぞれで構造や機能面が異なります。

ブロードマン脳地図
領野 機能
1-3 体性感覚野 触覚・深部覚・温痛覚の一次中枢
4 運動野 上肢、下肢、顔面、舌の運動
6 運動前野 骨格筋の運動調節
9-11 前頭連合野 知能、情緒
17 視覚野. 視覚の一次中枢
18,19 視覚連合野 視覚の二次中枢
20,21 側頭連合野 感覚刺激の統合、聴覚言語、記憶
23-35 大脳辺縁系 記憶の貯蔵・取り出し、嗅覚の中枢
22,42 聴覚連合野 聴覚の二次中枢
41 聴覚野 聴覚の一次中枢
43 味覚野 味覚の一次中枢
44,45 ブローカ野 言語の表出(書く、話す)

脳を輪切りにして見ていく

冠状断から見た場合

脳動脈の還流領域

脳動脈がどのように走行しており、どの部位に栄養を供給しているかを理解しておくと、脳卒中で障害された血管によって大まかな障害部位を判断することができます。

前述した大脳基底核は、①尾状核、②被殻、③淡蒼球に分けることができ、視床の外側に位置しているのがわかります。

また、視床と大脳基底核の間に錐体路の通り道である内包が位置しています。被殻出血や視床出血では、内包まで障害を受けることで錐体路症状(弛緩性又は痙性麻痺)を起こします。

大脳基底核 尾状核 学習、記憶
被殻 運動調節、筋緊張の調節(錐体外路)
淡蒼球

水平断から見た場合

脳動脈の潅流領域|水平断

水平断から見てみると、尾状核と被殻、淡蒼球の位置がよりわかりやすく理解できます。

尾状核と被殻は内包によって分断されており、その連絡部分が線条に見えることから、尾状核と被殻を合わせて線条体と呼ばれています。

被殻と淡蒼球は内包の外側に位置しており、密着していることからまとめてレンズ核と呼ばれます。そのため、尾状核とは異なった機能を有しています。

矢状断から見た場合

脳矢状断②

矢状面から見てみると、大脳や間脳、脳幹、小脳の位置関係がわかりやすいです。これら三つの断面図から脳を立体的に考えることができるようになるとより理解しやすくなります。

ペンフィールドのホムンクルス

大脳皮質には運動野と感覚野がありますが、身体の各部に対応する領域が存在します。それをペンフィールドがわかりやすく図にまとめたものがペンフィールドのホムンクルスです。

右側が感覚野、左側が運動野になります。図に描かれている部位の大きさは、その部分を支配する大脳皮質の面積に比例しています。

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下行性伝導路

神経の伝導路は、上行性(感覚神経)と下行性(運動神経)が存在しており、それぞれが脳の最上部である大脳皮質と連絡します。

感覚(嗅神経以外)は視床を通過して感覚野へ伝達されます。運動野からの指令は視床を通らずに下行していき、運動ニューロンに連絡します。

運動と感覚の伝導路

錐体路系

内包を通過する錐体路系では、脳卒中などで障害を受けることにより弛緩性麻痺や痙性麻痺を引き起こす原因となります。

錐体路系伝導路|外側皮質脊髄路|前皮質脊髄路|脊髄核路|経路②

錐体外路系

大脳基底核を通過する錐体外路系では、脳卒中などで被殻や尾状核、淡蒼球などが障害を受けることにより固縮を引き起こす原因となります。

錐体外路|経路|伝導路

外側皮質脊髄路を図でイメージする

上記のフローチャートのみではイメージが湧きにくいので、図によってわかりやすく理解できるようにしてみてください。下図は外側皮質脊髄路の経路になります。

外側皮質脊髄路の経路

上行性伝導路

上行性伝導路は、その感覚の種類によって、①外側脊髄視床路、②前側脊髄視床路、③後外側路の三つに分類されます。

体性感覚|経路|伝導路

外側脊髄視床路を図でイメージする

フローチャートをよりイメージできるように、こちらも図に入れ込んでみました。さらにペンフィールドのホムンクルスも合わせました。下図は外側脊髄視床路の経路になります。

外側脊髄視床路の経路

脳出血(被殻)でなぜ痙性麻痺が起こるのかを解説

錐体路が内包を通過するのは上述しましたが、なぜ被殻出血で痙性麻痺が起こるのか。

それは、被殻のすぐ隣は内包が位置しているからです。出血によって内包まで障害を受けてしまい、結果的に錐体路障害を呈することになります。図で見ると理解しやすいです。

脳出血の図|内包の障害

通常、純粋に錐体路(皮質脊髄路)のみが障害を受けた場合は弛緩性麻痺となります。

しかし、内包には皮質核路も通過しており、皮質核路は錐体外路を抑制的に制御しているため、障害された場合は錐体外路が活性化して筋緊張が亢進することになります。

下図は腱反射が亢進するメカニズムを記した流れですが、皮質核路の障害は筋紡錘の感受性を低下させ、運動を停止するための機構が障害されることになります。

この図だけ見ると少し難しいので、「筋緊張と深部腱反射が亢進するメカニズム」という記事を参考にしてもらうとより理解しやすいかと思います。

腱反射亢進のメカニズム

脳卒中では、「痙性」と「固縮」が混じり合ってる場合が多いといいますが、それは被殻(大脳基底核=錐体外路)と内包(錐体路)が隣り合っており、同時に障害されるためです。

視床の障害においては錐体外路までの距離があるため、過度な筋緊張の亢進こそ認められませんが、強い感覚障害を認めることになります。

もっと脳について知るための本

図解入門シリーズは初心者にも非常にわかりやすく書かれており、値段もそれほど高くないので持っておいて損はない一冊です。

 

具体的な脳損傷の部位とリハビリテーションの方法については、ケーススタディを通して書かれたこちらの本がお勧めです。


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The Author

中尾 浩之

中尾 浩之

1986年生まれの長崎県出身及び在住。理学療法士でブロガー。現在は整形外科クリニックで働いています。詳細はコチラ
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